クレジットカードでお金を借りる機能「キャッシング枠」について解説
ファイナンシャルプランナー
大学卒業後、多数のメディア編集業務に従事。その後、ファイナンシャルプランナー2級の資格を取得。FPとしての専門知識を活かし、カードローン、FX、不動産、保険など様々な情報におけるメディアの編集・監修業務を行ない、これまで計2000本以上の担当実績を誇る。ローン審査経験者などのインタビューなども多数行ない、専門知識と事実に基づいた信頼性の高い情報発信を心がけている。公式ページ:「ファイナンシャルプランナー村上敬」
クレジットカードでお金を借りる機能となるのが、キャッシング枠です。
このキャッシング枠にはどんな特徴があるのか、どうやって機能をつけるのかについて解説していきます。利用方法や返済方法が気になる方もご参考ください。
クレジットカードでお金を借りられる「キャッシング枠」
クレジットカードのキャッシング枠は、例えば借入可能額30万円というように決められます。
30万円のキャッシング枠がついているクレジットカードの場合は、その範囲内で必要に応じてお金を借りられます。
なお、会員規約の範囲ならお金の使いみちは自由です。
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主な用途 |
- 生活費
- お買い物
- 子どもの教育費
- 国内・海外旅行
- 娯楽・レジャー
- 治療費
- 携帯料金
- 冠婚葬祭など
キャッシング枠とショッピング枠の違い
お金をかりるうえで、キャッシング枠とショッピング枠の違いを確認しておきましょう。なおショッピング枠というのは、普段使っている「カード払い」ができる可能額を指します。
項目 | キャッシング枠 | ショッピング枠 |
---|---|---|
機能 | お金を借りる | 加盟店でのカード払い |
ポイントの付与 | × | ○ |
適用される法律 | 貸金業法 | 割賦販売法 |
キャッシング枠を利用しても、ポイントは付与されないのが一般的です。ただし、クレジットカードによっては、キャッシング枠の希望でポイントプレゼントするキャンペーンを実施していることがあります。
また、貸金業法は貸金業者への規制を定めている法律、割賦販売法はクレジットの適切な利用を定めている法律です。貸金業法、割賦販売法、両方とも顧客の保護にも役立っています。
キャッシング枠のつけ方
キャッシング枠をつけるタイミングは、クレジットカードへの新規入会時と発行後の2つです。詳しくは、以下の解説をご参考ください。
新規入会時にキャッシング枠を希望する
新規入会時に、キャッシング枠を希望できるクレジットカードが多いです。クレジットカードによっては、10万円・20万円・30万円など任意のキャッシング枠を指定できることがあります。
インターネットで申込みする時は、申込みフォームにキャッシング枠を希望できる欄があるかどうか確認してみてください。
クレジットカード発行後にキャッシング枠をつける
クレジットカードによっては発行後でも、キャッシング枠がつけられます。クレジットカード発行後にキャッシング枠をつけたい時は、以下の方法で申込み可能です。
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申請方法 |
- インターネット(カード会員用のWEBサービス)
- 電話(カスタマーセンター)
カード会員用のWEBサービスでキャッシング枠をつけたい時は、以下の流れをご参考ください。
- WEBサービスにログインする
- 利用可能枠変更へと進む
- 任意のキャッシング枠を選択する
- 申込みを完了させる
キャッシング枠の設定が完了しだい、クレジットカードでお金が借りられるようになります。
キャッシング審査への通過が必要
キャッシング枠をつけるには、審査への通過が必要です。審査に通過するには、カード会社の一定基準を満たさないといけません。
しかし、一定基準を満たせなかった場合は、キャッシング枠がつかないことがあります。また、以下に当てはまる方は、キャッシング枠の審査を受ける際に収入証明書類の提出が必要です。
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収入証明書が求められるケース |
- キャッシング枠が50万円超の方
- キャッシング枠+他社借入れ(貸金業者)の合計が100万円超の方
前回の提出から3年以上過ぎている方は、収入証明書類の再提出が求められることがあります。収入証明書類の提出が必要な方は次のうち、いずれか一つコピーしてください。
お勤めの方は源泉徴収票、または給与明細書を準備すると良いでしょう。
キャッシング審査を受ける際のポイント
キャッシング審査では年収や勤務先、勤続年数、他社借入れなど、さまざまな情報を確認しています。かけもちでアルバイトしているなどで、複数の収入がある方はすべて合計した年収を申告してください。
また、審査では個人信用情報を確認しています。過去のクレジットやローンの履歴(申込み内容や契約内容、返済状況、残高など)が登録されているのが個人信用情報です。
個人信用情報にキズ(長期延滞や債務整理、強制解約など)がある方は、審査に落ちる可能性が高くなります。
もし、個人信用情報にキズがある方は登録期間が過ぎて削除されてから、審査を受けると良いでしょう。個人信用情報のキズが削除されるまでの目安は、以下の表をご参考ください。
債務整理 | 信用情報の登録期間 |
---|---|
長期延滞(61日以上・3か月以上) | 1年~5年 |
債務整理(任意整理・個人再生・自己破産など) | 5年~10年 |
強制解約(クレジットカードなど) | 5年 |
代位弁済(保証人または保証会社が弁済) | 5年 |
キャッシング枠でお金を借りる方法
キャッシング枠を利用したい時には、以下の方法があります。クレジットカードでお金を借りたい時の参考にしてください。
ネットキャッシング
クレジットカードによっては、ネットキャッシングというサービスを提供しています。ネットキャッシングはインターネットまたは電話で申込みすると、登録口座に入金するサービスです。
楽天カードのネットキャッシングのように、最短数分で口座に入金するカード会社があります。ネットキャッシングは、今すぐ口座に入金してもらいたい時に便利なサービスです。
提携ATM
キャッシング枠より直接現金で借りたい時に便利なのが、提携ATMです。クレジットカードによって異なりますが、以下のように多くのATMと提携しています。
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提携ATM |
- 金融機関(都市銀行・ゆうちょ銀行・信金など)
- コンビニ(セブン銀行・ローソン銀行・イーネット)
カード会社はさまざまなATMと提携しているため、全国幅広いエリアの方でキャッシングしやすいです。提携ATMよりキャッシングする際は、クレジットカードと4ケタの暗証番号が必要になります。
海外でのキャッシングも可能
なかには、海外キャッシングサービスを提供するクレジットカードがあります。海外ATMより現地通貨で借りられるサービスとなっており、以下のようなさまざまなメリットがあります。
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海外でキャッシングするメリット |
- 世界多くの国でキャッシングできる
- 日本円から現地通貨へ両替する手間がない
- 両替するよりコストがかからないことがある
- 治安のよくない海外で大金を持ち歩かずに済む
海外旅行や海外出張時にあると安心なのが、海外キャッシングというサービスです。ただし、海外キャッシングには以下のデメリットがあります。
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海外でキャッシングするデメリット |
- 海外ATMがないと利用できない
- 日本語対応の海外ATMが少ない(英語で操作)
- 海外ATMには出金限度額がある
VISA公式サイトでは、海外ATM使い方ガイド(海外ATMの操作方法・ATM所在地マップなど)を掲載しています。キャッシング機能つきVISAカードを持っている方は、事前に海外ATM使い方ガイドを確認すると良いでしょう。
キャッシング枠の返済方法
キャッシング枠には2つの返済方法があります。キャッシング1回払いとキャッシングリボ払いの2つです。返済方法によって返済額も返済期間も異なるため、事前に確認しておきましょう。
キャッシング1回払い
キャッシング利用代金が、次回の支払日にまとめて引き落としされるのが1回払いです。
1万円~3万円など少額なキャッシングを利用した時に便利な返済方法です。海外キャッシングは1回払いのみというクレジットカードが見られます。
キャッシングリボ払い
毎月ほぼ一定額で返済できるのがリボ払いです。リボ払いには以下の返済方式があり、クレジットカードによって異なります。
・残高スライド方式
・定額方式
残高スライド方式では、次の表のようにキャッシング残高によって毎月の返済額がスライド(変動)していきます。
借入残高 | 最低返済額 |
---|---|
~10万円以下 | 3,000円 |
10万円~20万円 | 6,000円 |
20万円~50万円 | 10,000円 |
50万円~100万円 | 20,000円 |
上記の表を例にとると、追加キャッシングしても残高10万円以下に抑えれば、毎月の返済額は3,000円のまま変わりありません。キャッシング残高にあわせて柔軟に返済したい時に便利なのが残高スライド方式です。
定額方式では、キャッシング残高が増えても毎月の返済額は一定となります。毎月分かりやすい金額で返済したい時に便利なのが定額方式です。
また、クレジットカードよっては『後からリボ払い』に変更できるサービスを提供しています。『後からリボ払い』は1回払いを選んだが、後で返済がきつくなった時に便利なサービスです。
『後からリボ払い』を利用したい時は、締切日までにインターネットまたは電話で手続きしてください。
毎月の返済は口座振替
キャッシング利用代金は、口座振替で返済(登録口座より引き落とし)するのが基本です。キャッシング枠にもショッピング枠同様、締日と支払日があります。
利用代金が確定するのが締日、その確定した利用代金が口座振替となるのが支払日です。キャッシング枠とショッピング枠の支払日が同じで、キャッシング利用代金とショッピング利用代金が一緒に引き落としとなるクレジットカードが多いです。
クレジットカードによって締日と支払日が異なりますので、事前に確認しておきましょう。
ATMより追加返済できる
クレジットカードによっては毎月の口座振替のほか、ATMより追加返済できます。リボ払いを早めに完済したい時は、ATMより追加返済してください。
追加で返済をすることによって、借入残高が早く減るため、利息の節約に繋がります。
ただし、追加返済をしても、借入残高がある場合は毎月決められた返済はなくならないので注意してください。
キャッシングの注意点
キャッシング枠設定済みのクレジットカードを一枚持っていると、急な出費時にも対応しやすいです。
しかし、キャッシング枠には以下の注意点があります。
年15%~18%の利息が発生する
クレジットカードのキャッシングでは、年15%~18%ほどの利息が発生します。
同様にお金を借りられるサービスである、銀行カードローンの金利相場は年14%ほどですが、クレジットカードのキャッシングのほうが数%高い傾向にあります。
キャッシングの利息は、利用日の翌日から日割計算でつくクレジットカードが多くなっています。
そのため、1回払いよりリボ払いのほうが利息が多くなりやすいです。余裕がない時を除き、なるべく1回払いですぐに完済させたほうが良いでしょう。
キャッシングするとショッピング枠が減る
クレジットカードでキャッシングすると、ショッピング枠が減ることがあります。
それはショッピング枠のなかに、キャッシング枠が含まれるクレジットカードが多いからです。
ショッピング枠50万円、うちキャッシング枠20万円のクレジットカードで、キャッシング枠がどう減るのか説明してみましょう。
■10万円をキャッシングした場合
・キャッシング枠は10万円になる
・ショッピング枠は40万円になる
2つの枠はお互いに関係しているため、高額なカード払いを考えているときは、キャッシング枠の使いすぎに注意したほうが良いです。
現在のキャッシング残高が分からない時は、カード会員用のWEBサービスへログインしてください。
総量規制による年収3分の1ルールが適用される
貸金業法には、総量規制という年収3分の1ルールがあります。貸金業法が適用されるキャッシング枠は、この総量規制の対象です。
そのため、キャッシング枠よりお金が借りられるのは、年収3分の1までとなります。例えば、年収300万円の方は100万円までの借入れです。
なお、この制限は他社も含めた金額です。他社クレジットやローンで残高のある方は、さらにキャッシングできる金額が少なくなります。
※割賦販売法が適用されるショッピング枠は総量規制対象外
まとめ
クレジットカードのキャッシング枠は、使いみち原則自由のサービスです。
ネットキャッシングや提携ATMといった利用方法を用意しており、都合の良いお金の借り方ができます。
海外キャッシングできるクレジットカードが一枚あると、現金払いのみの海外店で買い物する時にも便利です。
ただし、キャッシング枠をつけるには、審査への通過が必要となります。
収入が少なすぎる、他社借入れが多すぎる、クレジットやローンへの返済を遅延している方はキャッシング審査に悪影響が出やすいため注意してください。