「現在バイアス」の罠を見抜く|太宰北斗先生が語る非合理な消費を防ぐ仕組み作り

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「現在バイアス」の罠を見抜く|太宰北斗先生が語る非合理な消費を防ぐ仕組み作り

奥山 裕基

マネット編集担当/キャッシングガイド

FP資格を有し、カードローン・消費者金融および貸金業に関する豊富な知識を持つ編集者。関連法規(貸金業法・金融商品取引法等)の理解を深めつつ、多数のローン経験者へのインタビューや金融機関勤務経験者へのヒアリングをもとにリアルな情報収集を怠らず、自身も当サイトにおいて1,000本を超える記事を執筆。生活に欠かせない「お金」だからこそ最適な意思決定を支援したいという理念のもとに情報発信を行っている。

「行動経済学」という言葉が、ビジネスや日常の場でも一般的に使われるようになった昨今。

ノーベル賞受賞者も輩出するこの分野は、なぜこれほどまでに注目を集めているのでしょうか。そこには、私たちが無意識に陥ってしまう「意思決定の罠」を解き明かすヒントが隠されています。

佐賀大学経済学部で行動経済学・行動ファイナンスを専門に研究される太宰北斗先生に、私たちがつい「うっかりミス」をしてしまう心理的メカニズムと、賢い資産形成をおこなうための「思考体力」の重要性を伺いました。

インタビュー中の太宰先生
太宰北斗先生 オンラインインタビューの様子

この記事の目次

なぜ人間は「非合理的な行動」をとってしまうのか

本日は貴重な機会をいただきありがとうございます。まずは太宰先生の専門分野と、行動経済学が注目されている背景について教えてください。

太宰先生

私は現在、行動経済学および行動ファイナンスの研究をしています。伝統的な経済学は「人間は常に合理的である」と想定しますが、実際はそうではありません。私は、人間がいかに非合理な行動をとるか、そしてなぜ金融市場でバブルや価格の歪みが生じるのかを、データを用いて分析しています。
最近は書店でも行動経済学の本をよく目にしますね。

太宰先生

そうですね。心理学的なアプローチを用いるので、数式よりも事例が直感的で分かりやすいのが人気の理由でしょう。人間はミスをする際に一定のパターンがあり、皆が同じように間違えるんです。授業でも、まずは受講生の意思決定がいかに間違うかを示すことからはじめます。

現代の消費社会に潜む「現在バイアス」の罠

「皆が同じように間違える」というのは興味深いです。現代の消費行動において、どのようなミスが起こりやすいのでしょうか。

太宰先生

特に影響が大きいのは、将来のコストや得を過小評価してしまう「現在バイアス」です。人間はつい、今の自分にとって都合の良い選択肢を選んでしまいます。
今の利得を優先して、将来を軽く見てしまうのですね。

太宰先生

はい。たとえばリボ払いやサブスクリプションなどが挙げられます。

太宰先生

計算が苦手だったり、うっかりミスが多い人は、このバイアスに陥りやすい傾向があります。単に知識を得るだけでなく、最後まで粘り強く「考えてみる」という習慣、つまり思考体力をつけておくことが、金融リテラシーの土台となります。

資産形成を成功させる「強制的な仕組み」

将来のことを過小評価しがちな私たちが、着実に資産を築くにはどうすればよいでしょうか。

太宰先生

自分の意志力に頼るのではなく、NISAのような積立方式を採用し、非合理的な癖が入り込まない「強制的な仕組み」を作ることも有効です。

太宰先生

資産形成においては「人生の記憶」が影響している可能性があります。バブルを経験した層や、逆に成長を知らない40〜50代は暴落の恐怖(バイアス)が強い一方、今の若年層は資産上昇を経験しており積極的です。しかし、高齢になるほど年金以外の自己資金が重要になるため、感情に流されずタイミングを見極めるリテラシーがより一層必要になるでしょう。

ギャンブルや借金から見えてくる「損失回避」の心理

先生は借金やギャンブルに関する行動経済学の研究もされていますが、ギャンブルなどで負けが込んでいるのについ「一発逆転」を狙ってしまう行動心理についても教えてください。

太宰先生

それは人間が持つ「損失回避」という強烈な性質によるものです。人間は損が確定することを極端に嫌います。

太宰先生

負債を取り返そうとして、あり得ない確率の事象を過大評価してしまう。全体像を見る「思考の体力」を失い、「今日勝ったかどうか」という点だけに熱くなってしまう人が多いです。
投資でも「損切り」ができない人は多いですよね。

太宰先生

損切りができない人は、分析的な脳ではなく、直感的・感情的な脳のシステムに頼りすぎています。パニックになると「今日だけはルールを破ってもいい」と自分を正当化してしまう。これを防ぐには、感情を挟む余地のない物理的な管理ルールを徹底するしかありません。

豊かなマネーライフを送るための「立ち止まる」習慣

最後に、手元のお金を豊かに使い、健全な家計を維持するためのアドバイスをお願いします。

太宰先生

お金を使う瞬間に、一瞬立ち止まって考えることです。リボ払いやサブスクなど、知らずに出費が増える現代だからこそ、「本当に必要か?」と自問する冷静さが重要です。
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非合理な行動を防ぐための物理的ルール

  • 購入前に本当に必要なサービス・商品なのか考える
  • 自分の現在の出費を見直してみる
  • 借金をする際は自分にとって必要なお金であるかを一度考える

もし借金を検討するような状況になったら、どう向き合うべきでしょうか。

太宰先生

借金の是非以上に、「なぜその事態になったのか」を振り返る思考の体力が必要です。

取材を終えて

「人間はミスをするパターンを持っている」という太宰先生の言葉は、自分の弱さを客観的に捉える勇気をくれました。リテラシーとは単なる知識ではなく、感情の波に飲まれそうな時に一瞬立ち止まる「思考の体力」そのものです。

自分のバイアスを理解し、あらかじめ仕組みで自分を縛ることこそが、真の意味で「自由」にお金を使いこなすための第一歩なのだと感じました。

Editor

マネット編集担当/キャッシングガイド

奥山 裕基

ついうっかり、今の自分に都合の良い選択をしてしまうことは誰にでもあります。まずは今日、お金を使う時に一呼吸置いて「バイアスにハマっていないか?」と自分に問いかけてみることからはじめてみましょう。

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