衝動買いや依存の背景にある無意識とは?心理学教授に聞く心のケア
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奥山 裕基
マネット編集担当/キャッシングガイド
FP資格を有し、カードローン・消費者金融および貸金業に関する豊富な知識を持つ編集者。関連法規(貸金業法・金融商品取引法等)の理解を深めつつ、多数のローン経験者へのインタビューや金融機関勤務経験者へのヒアリングをもとにリアルな情報収集を怠らず、自身も当サイトにおいて1,000本を超える記事を執筆。生活に欠かせない「お金」だからこそ最適な意思決定を支援したいという理念のもとに情報発信を行っている。
現代のストレス社会において、つい衝動買いをしてしまったり、お酒やゲームに過度にのめり込んでしまったりすることはありませんか?
「やめたいのにやめられない」という行動の裏には、私たちが普段意識していない「無意識の領域」や「深層心理」が大きくかかわっているといいます。
今回は、消費者の深層心理やメンタルケアを専門に研究されている、関西国際大学の伊藤俊樹教授にお話を伺いました。
衝動的な消費行動が起きる心理的メカニズムや、現代人に不可欠な心のデトックス法について、心理学の視点から詳しく紐解いていきます。
消費者の深層心理を探る「コラージュ法」
本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは、伊藤先生が現在メインで取り組まれているご研究について教えていただけますか?

伊藤教授
私の研究のメインの1つは「消費者の深層心理・無意識」に注目した研究です。一般的な消費者研究ではあまり無意識を扱わないのですが、私の場合は「無意識によってなぜ消費者の行動が変容するのか」を主に探求しています。
そのためのアプローチとして「コラージュ法」という手法を用いています。
コラージュ法、ですか。具体的にどのようなものなのでしょうか?
具体例ですが、「あるブランドのイメージ」といったテーマを提示し、それに合わせて雑誌の写真を切り抜いて画用紙に貼り付け、作品を作ってもらう手法です。重要なのは作って終わりではなく、完成した作品を見ながら「連想」を尋ねること。
仮に「犬の写真」が貼ってあったら、そこから思いつくことを論理的にではなく、直感的にいくつか挙げてもらいます。連想は論理を介さないため、その人の心の奥底にある無意識の世界と結びつきやすい。これによって、本人すら気づいていなかった本当の欲求や理想像を炙り出すことができるんです。
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直近の研究例 |
- 女子学生の「理想のカフェ」の研究
- 大学生の「理想の大学生活」の研究
ストレスが深いほど、無意識のコントロールを失う
今回のメインテーマである「ストレスと消費」についても伺いたいのですが、人間が心理的に不安定になると、どのような消費行動に走りやすくなるのでしょうか。
人は心理的に不安定になると、甘いもの、アルコール、性的な刺激といった「感覚的な快」によって、自分が感じているストレスを覆い隠そうとする傾向があります。
軽いストレスであれば論理的な判断で「今は必要ないから買うのをやめよう」と自分をコントロールできますが、ストレスが深くなるとそのメカニズムが吹っ飛んでしまう。無意識の中にある欲求が制御不能な状態でバーッと表に出てきてしまうのが、いわゆる「衝動買い」の正体です。心の中の満たされなさを埋めるために、論理的な判断ができずに動いてしまうわけですね。
企業側のマーケティングでも、そうした消費者の無意識や深層心理が活用されている事例はあるのでしょうか?
ありますね。過去の事例ですが、ビールのブランドイメージをコラージュ法で分析したことがあります。
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具体例 |
- A社のビールのイメージ: 海、開放、みんなでワイワイ(外向的)
- B社のビールのイメージ: 温泉、癒し、穏やか(内向的)
B社のブランドは、世の中の約3分の1を占める内向的な層をターゲットに「オフのときは(無理に外交的にならず)あなたのままでいいんだよ」というメッセージを込めたマーケティング戦略を立て、売上を大きく伸ばしました。消費者の深層心理や「あり方」にフィットする戦略を構築することは、非常に重要です。
依存と正常の境界線は「コントロールできるか」
弊社のサイトには、ストレスからギャンブルや過度な消費に走り、結果として借金を抱えてしまうような読者も多く訪れます。誰かを頼るのではなく、「消費」に走ってしまうのはなぜなのでしょうか。
消費行為というのは、お金さえあれば「自分1人の単独の行為」として手軽に快感を得られるからです。本来、人間の心を本当に満たすのは他者との良好な人間関係(ソーシャルサポート)なのですが、それを持てない孤独な人ほど、手軽に1人で満たされ感を得られるギャンブルや消費に走りやすいと言えます。
「ただの趣味・好きなこと」と「依存」の境界線はどこにあるとお考えですか?
最も大きな境界線は、「自分でやめたいタイミングでやめられるか」という自己コントロールの有無です。たとえばゲームを1日数時間で抑えようと思って実践できていれば正常ですが、やめようと思っているのに徹夜で続けてしまうような状態は、自分でコントロールを失っているため依存と言えます。
こうした依存状態にある人は、自分では問題だと自覚しにくく、周囲から勧められてはじめて相談の場に来ることが多いのも特徴です。
現代人に必要な心の解放、「自我のための退行」
そうしたストレスや依存から回復し、心の健やかさを保つためのアプローチはありますか?
心理学の概念に「自我のための退行」という言葉があります。現代人は普段、論理や知識、現実的な思考に縛られて頭がいっぱいになっています。そこからあえて意識的に離れて、非現実的なイメージや夢の世界に心を遊ばせることが、ストレスからの解放には不可欠です。
具体的には、どのようなアクションが有効なのでしょうか?
リラクゼーションやヨガのように体を通して解放感を味わうことや、絵を描くといった「非言語的な活動」に没頭することが効果的です。日頃の「お金を稼ぐための生産的な行動」とは真逆の、ある種「意味のない行動」をあえてやることが、心に余裕を生むデトックスになります。
私自身は、自分が見た夢を記録して分析しています。夢は論理を超えた無意識の表現そのものですから、そこから連想を辿ることで、自分の本当の欲求を見つめ直す時間が作れます。
アート表現によるメンタルケアというと、先生の研究にもある「なぐり描き法」なども該当しますか?
そうですね。新聞紙を見開いたくらいの大きな紙に、8色の絵の具を使って何も考えずにバーッとなぐり描きをしていく手法です。これを続けていくと、徐々に「青を使いたい」「鳥を描きたい」といった自分の要素が自然と混ざり合い、深いところにある自己イメージ(本質や悩み)が浮き出てきます。
ただし、これは感情にかなり激しい影響を与えるため、心理的な課題を抱えている人が1人で実行するとつらくなってしまう危険があります。基本的には、しっかりとそれを受け止めてくれるカウンセラーなどの存在がいる場ですることが望ましいです。ただ、日常生活で小さな用紙に少しなぐり描きをしてみる程度であれば、手軽なストレス解消として適しています。
まとめ
インタビューの最後に、伊藤教授は現代社会を生き抜くために最も重要なのは「人間関係であり、愛情である」と力強く語ってくださいました。
「どれだけ深刻な借金や問題を抱えていても、自分を支えてくれる人がたった1人でも存在することが、孤独を解消して精神を安定させる鍵になります」ともおっしゃっていました。
しかし、困ったときに他者へ助けを求めること(援助要請)が苦手な人ほど、ソーシャルサポートから孤立しやすいという課題もあります。だからこそ、自らSOSを出すのが苦手な人の存在に、身近な人が気づいて支えになることが大切です。
生きにくさを解消するためには、周囲からの愛に気づくだけでなく、ペットでも身近な人でも「自らが愛する対象を見つけ、愛する力を育てること」が、心に本当の余裕をもたらすのだと教えていただきました。
つい消費や依存に走ってしまいそうなときは、一度立ち止まり、自分の内面の声(無意識)に耳を傾け、周囲とのつながりを見つめ直してみてはいかがでしょうか。