不安や焦りにどう対処する?花園大学の丹治先生に聞く心のコントロール法
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奥山 裕基
マネット編集担当/キャッシングガイド
FP資格を有し、カードローン・消費者金融および貸金業に関する豊富な知識を持つ編集者。関連法規(貸金業法・金融商品取引法等)の理解を深めつつ、多数のローン経験者へのインタビューや金融機関勤務経験者へのヒアリングをもとにリアルな情報収集を怠らず、自身も当サイトにおいて1,000本を超える記事を執筆。生活に欠かせない「お金」だからこそ最適な意思決定を支援したいという理念のもとに情報発信を行っている。
将来への不安や金銭的な悩み、不確実な社会環境の中で、「どうすれば良いか分からない」「焦りで冷静な判断ができない」と感じる瞬間は誰にでもあるものです。
そんな時、私たちは神社でおみくじを引いたり、ジンクスやおまじないに頼ったり、あるいは「一発逆転」を狙った行動に走ってしまうことがあります。なぜ人は不確実な状況で何かに頼りたくなるのでしょうか?
そして、危機的な状況下で心を失わず、冷静さを取り戻すためにはどのようなアプローチが有効なのでしょうか?
今回は、臨床心理学をはじめAI(人工知能)や統計学まで多角的な視野で「心」を研究されている、花園大学の丹治光浩先生にお話を伺いました。
心の適応メカニズムから、日常で実践できる思考の整理術、自分らしく生きるための「自己決定」の重要性まで、不確実な現代を軽やかに生き抜くヒントをご紹介します。
臨床心理学からAI・統計まで|丹治先生の研究と「心」の本質
丹治先生、本日はよろしくお願いいたします。まずは先生のご研究の領域や、日頃どのような課題感を持って取り組まれているのかお聞かせいただけますでしょうか。

編集者

丹治先生
よろしくお願いします。私は1つのテーマを何十年も追い続けるというより、その時その時で興味のある課題に取り組んできました。大きく分けると現在は3つの領域があります。
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直近の研究テーマ |
- 箱庭療法(心理療法)
- 心理学×AIの研究
- 統計学における「有意水準」の検証
1つ目は「箱庭療法」という心理療法で、砂箱の中にミニチュアを置いて自己表現を促す技法を発展させる研究です。
2つ目は近年のAIの台頭に伴い、心理テストをAIに解かせて人間との思考プロセスや創造性(クリエイティビティ)の違いを調べる研究ですね。
そして3つ目は、統計学における「有意水準(5%や1%)」の基準についての検証です。
AIや統計学も扱われているのですね!一般的な臨床心理学のイメージよりも少し幅広く感じます。
そう思われるかもしれませんね。ですが、事象が「偶然起きるのか、必然的に起きるのか」という感覚は、まさに人間の心の問題そのものです。
私自身、かつて病院で臨床心理士として勤務していた経験がありますし、現在は仏教系の大学におります。自分の過去の臨床経験や目の前にある問いは、広い意味ですべて心理学として繋がっていると感じています。
なぜ人はジンクスやおまじないに頼るのか?適応機制としての心理
日常で不安を感じた時、私たちは占いやおみくじ、ジンクスなどに頼りたくなることがあります。心理学的な観点から、人はなぜそういった不確実なものに頼りたくなるのでしょうか?
人間にとって「予測不可能でコントロールできない状態」というのは非常に大きな不安をもたらします。将来の可能性を考えた時、世の中は分からないことだらけですからね。
ジンクスや占い、あるいはスポーツ選手が打席前におこなうルーティンなどは、予測不能な出来事に対して「あたかも自分自身がコントロールできている」という錯覚を与えてくれます。この「コントロール感」を持つことが、心理的に強い安心感を生み出します。
なるほど。そういった「縋りたい心理」は、人間としてネガティブな反応なのでしょうか、それとも誰にでもある自然なものなのでしょうか?
むしろ「生きるための防衛」というより「適応」として捉えるのが適切です。
心理学ではかつて「防衛機制(ディフェンスメカニズム)」と呼ばれていた概念を、最近では「適応機制」と訳すことが増えています。人間がより良く環境に適応していくための有効で大切な手段ですので、決してネガティブなことではありません。
現代社会の不確実性と「選択肢の多さ」が生む不安
情報が溢れ、昔よりも不確実性が増した現代だからこそ、そうした心の適応が必要とされているのでしょうか。
そうですね。現代は価値観が多様化し、将来の先行きが不透明です。社会が安定していれば大いなる力に頼る必要は薄れますが、環境のストレスが増えると心への負担も大きくなります。
また、「何でも自由に選んでいいですよ」と言われると、人間はかえって混乱してしまう側面があります。子どものカウンセリングでも、おもちゃが溢れかえった部屋で「何をして遊んでもいいよ」と言われると、逆に立ち尽くしてしまう子がいるんです。
過剰な情報や選択肢は人間を疲れさせます。自由でありながらも、自分の許容範囲の中でほどよい選択肢がある状態が、心がもっとも落ち着くと言われています。
金銭的ピンチや窮地で起きる視野狭窄と対処法
お金の困窮や病気など、深刻な危機に直面した時、人間の判断力や視野にはどのような変化が起きるのでしょうか?
危機的な状況に置かれると、人間には視野狭窄が起きやすくなります。暗いトンネルの中から小さな出口の光だけを見ているような状態で、周囲のサポートやアドバイスが一切目に入らなくなってしまいます。
この状態になると、極端な「現状維持」に固執するか、あるいは「一発逆転を狙った衝動的な暴走(ギャンブルなど)」のどちらかに振り切れやすくなります。
そうした視野狭窄や思考の偏りに気づき、冷静さを取り戻すための実践的なアプローチはありますか?
一番のおすすめは「紙に書くこと」です。書くことで自分の思考や感情を整理し客観視できます。
書く際のポイント
「実際に起きた事実」と「自分の思い・感情」を分けて記述すること。
さらに、物理的・心理的に「その場から一旦離れる」ことも有効です。場所を変えたり時間を置いたりするだけで気分が切り替わり、冷静さを取り戻しやすくなります。
また、「もし他人だったらどう考えるだろう?」「自分の考えに根拠や証拠はあるだろうか?」と第三者の視点を取り入れて自問自答することも、思考の偏りを防ぐ手段になります。
心を安定させる「安全基地」と「グッドイナフ(ほどほど)」の精神
普段から心がけておける「メンタルを崩さないための心の持ちよう」はありますでしょうか?
いくつかポイントがあります。1つ目は、心の「安全基地」を複数持つことです。ストレス解消法や相談できる相手を1つだけに絞らず、複数の選択肢を用意しておくことで、心理的な適応の幅が広がります。
2つ目は、問題を「抱える力(コンテインする力)」を養うことです。人生の悩みすべてを解決することはできません。解決できる課題には努力し、解決できない悩みは「抱え込んだまま付き合っていく」という姿勢が大切です。
3つ目は、イギリスの精神科医ウィニコットが唱えた「グッドイナフ(Good Enough=ほどよい)」という精神です。完璧を目指して100点を求めるのではなく、「60点取れれば合格点」と自分を優しく許容してあげることですね。
周囲の意見やSNSの情報に振り回されず、自分軸を保つためには何が必要でしょうか?
アドラー心理学の「課題の分離」という概念が参考になります。「これは自分の課題か、それとも他者の課題か」を区別し、自分の変えられる範囲にエネルギーを集中させるのです。
そしてもう一つ大切なのが、「自分で決める(自己決定)」という体験を増やすことです。
「朝食に何を食べるか」「何時に起きるか」といったごく小さなことでも、自分で決定して行動する経験を積み重ねると、自己効力感(自分はやれるという感覚)が高まります。
小さな自己決定が増えれば他人に依存したり流されたりする必要がなくなり、自分軸がしっかりしていきます。私の勤務する花園大学でも「自立(自分で考え、決め、行動する)」を大切にしていますが、まさにこの主体性が心の安定につながります。
画像引用:花園大学
【まとめ】
インタビューの最後に、丹治先生は現代を生きる私たちへ向けて次のようなメッセージをくださいました。
特別なことをしようとするのではなく、日々の淡々としたルーティンや小さな役割を丁寧にこなしていくことが、結果として心の安定をもたらします。
すべてを解決しようと焦るのではなく、病気や思い通りにならないことも含めて。人生を受け入れる優しさを自分に向けてあげてください。
窮地に陥った場合はすぐに相談を
どうしても一人で抱えきれない苦しさや窮地に陥ったときは、決して諦めたり一人で抱え込んだりせず、専門機関や心理カウンセラーを頼ることが推奨されます。
全国の大学には一般利用が可能な「心理カウンセリングセンター」が約200箇所設置されているなど、身近な相談窓口も存在します。
また、専門家との相談においては「相性」も非常に重要とのことです。一度うまくいかなかったとしても諦めず、自分に合ったセラピストや専門家を探してみましょう。
日々の小さな決断を大切にし、「ほどほど」の自分を許しながら、必要なときには周囲の手を借りる。それこそが、不確実な時代を穏やかに生き抜くための鍵と言えそうです。