生活困窮は社会の歪み。支援制度を「自立への回復」に活かす
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奥山 裕基
マネット編集担当/キャッシングガイド
FP資格を有し、カードローン・消費者金融および貸金業に関する豊富な知識を持つ編集者。関連法規(貸金業法・金融商品取引法等)の理解を深めつつ、多数のローン経験者へのインタビューや金融機関勤務経験者へのヒアリングをもとにリアルな情報収集を怠らず、自身も当サイトにおいて1,000本を超える記事を執筆。生活に欠かせない「お金」だからこそ最適な意思決定を支援したいという理念のもとに情報発信を行っている。
借金問題や突然の生活困窮に直面したとき、「周りに迷惑をかけられない」「自分が情けない」と一人で抱え込んでしまう人は少なくありません。
しかし、福祉制度や公的支援は「転落の証」ではなく、本来の生活を取り戻すための「リカバリー(回復)の手段」です。
今回は、社会福祉学や中間支援組織、地域の居場所作りを専門に研究されている、星槎道都大学社会福祉学部の上原正希教授にお話を伺いました。
生活困窮の背景にある社会構造、相談へのハードルを下げる捉え方、そして自立に向けた制度の活用法について深掘りします。
居場所とは物理的スペースではなく「安心できる人間関係」
本日はよろしくお願いいたします。事前ヒアリング含め、貴重なお時間いただきありがとうございます。

上原教授
上原先生は日頃から「中間支援組織」や「居場所のあり方」について研究されているとのことですが、先生が考える「居場所」とはどのようなものでしょうか?
居場所というと、自宅やカフェ、ゲームセンターといった物理的な空間や設備を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、たとえ快適な空間であっても、そこに嫌な人がいれば居心地は悪くなりますよね。
逆に、どんな場所であっても自分を肯定的に受け入れてくれる人がいれば、そこは安心できる場所になります。
つまり、居場所とは物理的な「スペース」ではなく、「人間関係」そのものなのです。自分にとって居心地の良い関わりができる相手を見つけることこそが、本当の意味での居場所作りにつながると考えています。
場所ではなく、人との関係性が居場所になるのですね。
その通りです。また、自分と同じ意見の人ばかりと居るのが必ずしも良いとは限りません。自分とは異なる視点を持つ人と関わることで視野が広がることもあります。お互いの良いところを認め合える関係性を少しずつ広げていくことが大切です。
困窮は個人のせいではない。社会福祉制度を自立へのリカバリーに活かす
日本では「人に迷惑をかけてはいけない」という意識が強く、お金や生活に困ってもギリギリまでSOSを出せない人が多いように感じます。
まさにそこが大きな課題です。日本には、自立できないのは個人の努力不足だと自分を責めてしまう傾向があります。
しかし、収入の減少や生活困窮の背景には、個人の責任だけでなく社会の構造的な歪みが大きく影響しています。「社会の歪みのせいで自分は今困っているんだ」と捉え直すことで、「支援を頼ってもいいんだ」という権利意識を持ちやすくなります。
生活保護や公的貸付などの福祉制度を利用することに「恥ずかしさ」や「負けたような感覚」を覚える人も少なくありません。
福祉制度や金融サービスを利用することは、決して泥沼への転落ではありません。元の生活や自分らしさを取り戻すための「リカバリー(回復)のツール」です。
たとえば、自立に向けて一時的に3万円が足りないときに公的貸付や適切な制度を活用して立て直すのは、非常に合理的で前向きな選択です。制度利用を「失敗」と捉えるのではなく、「自立に向けた一つのエッセンス」として割り切って活用してほしいですね。
生活保護の手前で助けてくれる「生活困窮者自立支援制度」とは?
実際に「今、お金や生活に困っている」という場合、具体的にどのような支援を受けることができるのでしょうか?
2015年に施行された「生活困窮者自立支援法」に基づき、各市区町村には「自立相談支援機関」が設置されています。これは、生活保護に至る手前の段階で自立をサポートする窓口です。
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具体的な支援内容の例 |
- 就労支援・家賃補助:仕事探しの伴走支援や、一定期間の家賃相当額の給付・貸付
- フードバンク等の食料支援:企業や地域から提供された食料を生活困窮者へ無償提供
- 家計改善の相談:家計のやりくりや借金問題の整理に向けた伴走サポート
「ただ話を聞いて終わり」ではなく、住まいや食事、就労に繋がる具体的なアクションを受けられるのですね。
はい。ソーシャルワーカーの専門性は、単に相談を聞くだけでなく、その人が自立するまで「人生を伴走すること」にあります。制度の周知がまだ不十分な側面もありますが、困り果てる前にぜひ知っていただきたい制度です。
孤独感を和らげる「幅広い繋がり」と「傷が浅いうち」の早期相談
ギャンブルや借金などの課題を抱えている人は、周囲に相談できず孤立してしまうケースが多いです。どのように一歩を踏み出せばよいでしょうか?
ポイントは「傷が浅いうちに相談すること」です。思考がネガティブに傾き始めた段階で、誰かに気持ちを打ち明けたり専門機関にアクセスしたりすることが、深刻な悪化を防ぎます。
また、「繋がり」の定義をもう少し広く捉えてみてください。直接人と対面することだけが繋がりではありません。
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繋がりを具体化して捉える |
- オンラインやSNS、ゲームでの交流
- 自助グループや地域ミーティングへの参加
- 広報誌を読むことや、毎日の食事を通じた生産者との繋がり
世の中に完全に孤立している人はいません。日常生活の営みの中で「自分はどこかで社会と繋がっている」と感じることが、生きる意欲や回復へのきっかけになります。

画像引用:星槎道都大学
悩める人へのメッセージ
最後になりますが、先行きが見えず不安を抱えながら日々を生きる読者へ向け、福祉・ソーシャルワークの現場から温かいメッセージをお願いいたします。
多くの人は不安や迷いを抱えながら、一歩ずつ歩き続けることで自分の道を見つけています。不安になるのは、あなたが真剣に生きている証です。今は答えが見えなくても構いません。明日のことがわからなくても構いません。大切なのは、「今日」をあきらめないことです。
遠くのゴールばかりを見ようとすると苦しくなります。そんなときは、「今日は起きられた」、「誰かに挨拶できた」、「少しでも前に進めた」。その小さな一歩を認めてあげてください。
人生は大きな決断よりも、小さな積み重ねによって形成されていきます。みなさんで良い社会をつくりましょう。
深い言葉ですね。この度は本当にありがとうございました。
まとめ
生活困窮や金融課題に直面したとき、自分一人で抱え込んで悩みを深くしてしまう必要はありません。公的な自立支援制度や地域の相談窓口は、あなたが再び自立して歩み出すための頼もしいサポートツールです。
上原教授が語るように、完璧な未来を描けなくても「今日一日を諦めないこと」「小さな一歩を自分で認めてあげること」が何より大切です。
もし少しでも不安や生きにくさを感じたら、傷が浅いうちに相談窓口や信頼できる繋がりに手を伸ばしてみてください。