平和ボケからの脱却が必要|大藪千穂教授が語る金融リテラシーの重要性

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平和ボケからの脱却が必要|大藪千穂教授が語る金融リテラシーの重要性

村上敬

貸金業務取扱主任者・FP

2級FP技能士、貸金業務取扱主任者(登録番号:K250020096、合格番号:第F241000177号)。
大学を卒業後、カードローン、FX、不動産、保険など様々な情報におけるメディアの編集・監修に携わり、実績は計2000本以上。ローン利用者へのインタビューなども多数実施し、専門知識と事実に基づいた信頼性の高い情報発信を心がけている。

奥山 裕基

マネット編集担当/キャッシングガイド

FP資格を有し、カードローン・消費者金融および貸金業に関する豊富な知識を持つ編集者。関連法規(貸金業法・金融商品取引法等)の理解を深めつつ、多数のローン経験者へのインタビューや金融機関勤務経験者へのヒアリングをもとにリアルな情報収集を怠らず、自身も当サイトにおいて1,000本を超える記事を執筆。生活に欠かせない「お金」だからこそ最適な意思決定を支援したいという理念のもとに情報発信を行っている。

日本人の金融リテラシーの低さが叫ばれて久しい昨今。

2022年からは高校での金融教育も必修化されましたが、限られた時間で基礎知識を学ぶだけで、私たちの人生は本当に豊かになるのでしょうか。

家庭経済学の第一人者であり、消費者教育の最前線で活躍される岐阜大学副学長も務めるの大藪千穂教授に、日本人が今持つべきマネーリテラシーの本質と、豊かなマネーライフを送るための秘訣を伺いました。

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この記事の目次

家庭科から紐解く、お金と幸せの相関関係

本日は貴重な機会をいただきありがとうございます。まずは先生の専門分野と、これまでの歩みについてお聞かせください。

編集者

大藪先生

私は現在、教育学部の家政教育講座で、将来家庭科の先生になる学生たちを指導しています。専門は家庭経済学、家庭経営学です。
どのような経緯で今の活動に至ったのでしょうか。

もともとお金そのものというよりは、生活の質(QOL)に興味がありました。研究のスタートは、エンゲル係数や貧困といったテーマからです。バブル崩壊を経験し、日本人が「お金があれば幸せになれる」という神話に疑問を持ち始めた時期に、それ以外の幸福への影響について考察し始めました。

アーミッシュという200年前の自給自足的な生活を、世界の先進国のアメリカの生活を知りながら維持している人々のライフスタイルの研究もしています。

現在は、消費者庁の検討会などで消費者教育の普及に努めるとともに、子どもたちが楽しみながらお金を学べるスマートフォンアプリ「人生ゲーム」や「エンディングプランニングゲーム」の開発・活用も推進しています 。

なぜ日本人の金融リテラシーは「低い」と言われるのか

近年、日本の金融リテラシーの低さが課題視されています。先生はこの現状をどう分析されていますか。

大きく2つの要因があると考えています。1つは、これまで学校教育で体系的にお金を学ぶ機会が少なかったこと。そしてもう1つは、日本が非常に「恵まれていた」ことです。
恵まれていたことが、リテラシー低下を招いたと?

はい。私はこれを平和ボケの状態と呼んでいます。これまでの日本は社会保障制度が非常に充実しており、極端な話をすれば、お金のことを深く考えなくても、国や会社が将来をある程度保証してくれていました。

安定が思考を止めてしまっていた

貯蓄の必要性を切実に感じなくても生活できてしまった。この安定が、結果として自分自身の資産やリスクを管理する力を弱めてしまった側面があります。

しかし、現在は世界情勢も不安定になり、制度の持続可能性も不透明です。この平和ボケから脱却し、自分の力で生き抜くための情報処理能力と、リスクを見通す力を持つことが、今まさに求められているリテラシーの本質なのです。

学校よりも「家庭」が最大の教育現場である

高校での金融教育も始まりましたが、教育現場の現状はいかがでしょうか。

学校での教育は重要ですが、実は割ける時間は驚くほど少ないのが現状です。私は、お金の教育において最も重要なのは家庭教育だと考えています。

実生活の中で知識を養う

家庭での教育とは、具体的にはどのようなことが必要でしょうか。

小さな頃からお小遣いを与え、自分で差配させること。そして、隠さずに家計の状況を話すことです。

最近の大学生を見ていて危惧するのは、自分自身のスマートフォンの料金すら把握していない学生が少なくないことです 。知識としての投資信託は知っていても、自分の生活費という肌感覚の経済が欠如している。

スーパーに行って物の値段を見る、といった日常生活に紐づいた体験こそが、生きた知識となります。小さい頃からそれをしているかしていないかでは、大きく違います。

借金は悪ではない、管理する覚悟が必要

私たちはローンの領域を専門にしていますが、どうしても「借金=怖い、悪いもの」というイメージが先行しがちです。そのあたりはどうお考えですか?

私は借金自体を否定はしません。住宅ローンや教育ローン、あるいはクレジットカードの分割払いなど、現代生活において借金は身近なツールです。

重要なのは自分の支払い能力と将来の見通しを管理できているかという一点に尽きます。

ローンを利用するならシミュレーションが最重要

例えば、最近は80年ローンといった超長期の住宅ローンも登場していますが、これはあくまで金融機関側の論理です。退職前に完済できるのか、子どもの教育費が必要な時期に「余裕」を残せているか。

他人の勧めに従うのではなく、消費者自身が金利やリスクをシミュレーションし、最後は自分の意思で決定しなければなりません 。
足りないから借りるという、安易な発想は危険だということですね。

その通りです。お金を借りる際には必ず、返済できる「あて」があることが大前提です。金融リテラシーが低いまま、仕組みを理解せずに高金利のローンを組んでしまうと、多重債務という出口の見えない状況に陥ってしまいかねません。

豊かなマネーライフを送るための「家計管理」術

最後に、日々忙しく働く社会人が、豊かなマネーライフを送るために今日からできるアドバイスをお願いします。

まずは現状把握力を磨くことです。家計管理の第一歩は、家計簿をつけること。ただし、完璧を目指す必要はありません。細かく分類しすぎると続きませんから、まずはザックリでもいいので、お金の流れを把握することから始めてください。
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家計簿アプリの例

  • マネーフォワードME
  • OsidOri(オシドリ)
  • Zaim(ザイム)
  • おカネレコ
続けるためのコツはありますか?

1年に1回でもいいので、必ず分析の時間を設けることです。貯蓄率はどうか、エンゲル係数は適正か、自分の支出の傾向をデータとして客観視する。すると、自分にとって本当に価値があるものは何かという優先順位が見えてきます。

日常のマネーライフをデータ化してみる

例えば、持ち物をデータ化してみるのも面白いですよ。自分が持っている服の数や金額を把握することで、無駄な出費を減らす楽しみが見つかるかもしれません。
お金そのものを追うのではなく、お金を通して「自分の人生の意味」を見つめ直すということですね。

その通りです。家賃は収入の3割以内に収めるといった基本的な目安を守りつつ、自分の価値観に基づいた支出のバランスを整えていく。そうした生活経営の意識を持つことこそが、不安定な時代において、心身ともに豊かなマネーライフを実現する唯一の道だと確信しています。

取材を終えて

「平和ボケからの脱却」という大藪先生の言葉には、教育者としての強い危機感と、学生や市民への深い愛情が込められていました。

単なるテクニックではない、生活に根ざしたリテラシーを育むこと。

それは、自分の人生の舵取りを自分自身で取り戻すプロセスそのものなのだと感じました。

Editor

マネット編集担当/キャッシングガイド

奥山 裕基

豊かなマネーライフを送りたいとは誰もが多かれ少なかれ考えているかと思いますが、それを具現化するためにも、今日から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

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