突然の海外赴任命令でもあわてないで! ~NISA(ニーサ)が継続できるようになりました~
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ファイナンシャルプランナー
Global FP Salon代表。大手電機メーカーの海外部門にて8年間勤務後、夫の海外赴任に伴い、ロシアに4年間在住。帰国後、海外生活セミナー講師や証券会社での勤務を経て、現在は、米国在住中。海外赴任や海外生活に関わる相談を得意とする。主な著書に『夫の海外赴任を「自分ごと」にする―グローバル駐在妻の選択―“転機”をチャンスに―』がある。
突然の海外赴任命令も他人事ではない
「当初の予定では4月から海外赴任のために米国へ向かう予定だったんだけど、コロナ禍のために足踏み状態なんです・・・」という知人友人からの声。
また、「当初の予定では、10月からAさんに海外の子会社で勤務してほしいと思っているのだが、コロナ禍のために打診できずにいるんです・・・・」という企業の人事担当者の声もチラホラ聞こえてきます。
日本企業の海外進出は拡大傾向
現状では海外への人の動きは抑制されているものの、日本企業の海外進出は拡大傾向であり、海外へ派遣される日本人の数も増加しています。
経済産業省の海外事業活動基本調査によると、2019年の日本企業の現地法人企業数は、26,233社(2019年3月31日時点)と41.0%増加(2010年度比)しています。
また、企業の海外進出と共に、企業からの海外派遣勤務者も増加の一途をたどっています。2019年度の外務省の海外在留邦人数統計によると、海外の長期滞在者数は876,620人(2018年10月1日時点)と、絶対数で15.5%増加(2010年比)しています。
国内の転勤だけでなく海外への転勤の可能性も考慮する
ライフデザインを考えるとき、もはや国内の転勤だけでなく海外への転勤の可能性も否定できないのです。勤めている企業に海外支店や子会社といった海外拠点がないので海外赴任なんて自分には関係ない、と思っていても、勤めている会社が突然、外資系企業に買収されたり、海外に拠点を持つ企業を買収したりすることもあります。
突然の海外赴任命令も他人事ではありません。
海外居住中、証券総合口座は取引が制限される
- 海外勤務や留学等のために出国し、日本国内「非居住者※」となる場合は、あらかじめの届出が必要です。
- 出国されている間は、当社の証券総合口座にて国内株式、海外株式、債券等をお預かりするのみとなり、一時的にお取引等が制限されます。
- 帰国後にご連絡いただくことで、制限解除のお手続きをさせていただきます。
- 出国中、特定口座での保有商品は一時的に一般口座に振替えられ、特定口座は廃止されます。
【引用】楽天証券サイト
※楽天証券における「非居住者」の定義:1年以上にわたる日本以外での居住、または居住予定がある。期間の定めのない海外転勤、海外留学。
(2020年7月現在)
手続き等については各証券会社によって異なりますが、海外居住中は証券総合口座は取引が制限されるため、その間の資産形成について不安を抱える方が多いのが現状です。
NISA口座であれば最長5年間まで非課税で口座を持ち続けることができる
貯蓄から投資へ
今のような低金利下では、銀行の定期預金に預けるよりも、株式や投資信託での資産運用を選ぶ方が増えているのではないでしょうか。
ネット証券の口座開設数も増加傾向で、ネット証券最大手のSBI証券は、2020年3月の新規口座が12万と、1999年のサービス開始以来、月間で最多になったことを発表(【参照】日本経済新聞 2020年6月18日付記事)しています。
「貯蓄から投資へ」という言葉の通り、海外在住中も資産運用は継続したいものです。
NISA口座であれば資産運用は継続できる
これまでは海外居住中、NISA口座で持っていた株式などは課税対象の口座に払い出され、NISA口座自体も廃止されていたため、非課税の恩恵を受けられないだけでなく、長期の資産形成が難しい状況でした。
しかし、2019年度の税制改正において、少額投資非課税制度のNISA口座について制度見直しが行われ、非居住者になった場合でも、NISA口座であれば最長5年間まで非課税で口座を持ち続けることができるようになりました(2020年7月現在)。
NISAの基本を紹介
「NISAのことについて名前は知っているけれど利用したことがないんです・・・」という方も多いことでしょう。もう1度、NISAの基本をおさらいします。
一般NISA
「NISA(ニーサ)」とは、2014年1月から始まった少額投資非課税制度のことです。「つみたてNISA」と区別するため、「一般NISA」とも呼ばれています。
証券会社や銀行、郵便局などの金融機関で、少額投資非課税口座(以下、NISA口座)を開設して、その口座内に設定する一般NISA勘定において上場株式や株式投資信託等を購入すると、本来20%(復興特別所得税を含めると20.3150%)課税される配当金や売買益等が、非課税となります。購入できる金額は年間120万円まで、非課税期間は5年間です。
つみたてNISA
「つみたてNISA」とは、2018年1月から始まった積立型の少額投資非課税制度のことです。
証券会社や銀行、郵便局などの金融機関でNISA口座を開設して、その口座内に設定する累積投資勘定(つみたてNISA勘定)においてETF(上場投資信託)や株式投資信託を購入すると、本来20%(復興特別所得税を含めると20.3150%)課税される分配金や売買益等が、非課税となります。購入できる金額は年間40万円まで、購入方法は累積投資契約に基づく買付けに限られており、非課税期間は20年間です。
なお、「一般NISA」と「つみたてNISA」は選択制になっており、同一年中は両方を設定することはできません。
非課税の適用を受け続けるためには、出国の前日までに手続きが必要
手続きをしなければ非課税の適用は受けられない
出国後も引き続きNISA口座を保有し、非課税の適用を受けたい場合は、出国日の前日までに、NISA口座を開設している金融機関に「(非課税口座)継続適用届出書」を提出することが必要です。また、帰国後にNISA口座で非課税の適用を受けることを希望する場合には、NISA口座を開設している金融機関に「(非課税口座)帰国届出書」を提出する必要があります。
ジュニアNISAは対象外
非課税の適用を受けられるのは、上記で説明した「一般NISA」と「つみたてNISA」が対象となります 。「ジュニアNISA」(子供の将来に向けた資産運用のための制度であり、0~19歳の方が口座開設可能。親・祖父母等が拠出した資金で親権者等が子どものために代理で運用をすることも可能)は対象外となりますので、今まで通り、口座閉鎖の手続きが必要となります。
NISA口座の非課税の適用を受け続けた際の注意点
「一般NISA」と「つみたてNISA」には、以下のような注意点もあります。
- 海外滞在期間中は「一般NISA」で新規の買付けができません。「つみたてNISA」の投資信託等の積立設定も解除されます。
- 非課税の適用を受けられる期間は、「(非課税口座)継続適用届出書」を提出した日から5年を経過する日の属する年の12月31日までの期間となります。
- ※【例】2021年1月30日に書類提出の場合、2026年12月31日までが非課税適用期間
- 海外滞在期間中に、NISA口座での保有商品の非課税期間が終了した場合は、一般口座(課税対象の口座)へ移管されます。
- 非課税の適用を受けられる期間の終了までに「(非課税口座)帰国届出書」を提出しなかった場合は、NISA口座は廃止され、NISA口座での保有商品は一般口座へ移管されます。
- 「つみたてNISA」の場合、NISA口座の非課税の適用が受けられる期間(5年間)までに帰国すれば、引き続き、投資した年から最大20年間、非課税の取り扱いを受けられます。また、新たな買付も可能です。
具体例
2019年にNISA口座を開設し「つみたてNISA」で年間40万円を買付設定後、2021年1月に海外在住開始、2024年12月に帰国の場合。
注:筆者作成 【参考】日本証券業協会
海外赴任する際のNISA口座への対応に関するよくある質問
まとめ
様々な注意点があるものの、非課税の恩恵を受けつつ運用継続できるようになったことは、長期の資産形成にも利点がありますので、NISA口座を保有されている方は、ぜひ口座継続手続きをすることをお勧めします。