老後費用を備えるための3つのステップ

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老後費用を備えるための3つのステップ
この記事を執筆した専門家

ファイナンシャルプランナー

岩永真理

ファイナンシャル・プランナー(一級FP技能士・CFPⓇ)、住宅ローンアドバイザーロングステイ・アドバイザー
大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年以上勤務。夫の転勤に伴い退職後は、欧米アジアなどに通算15年以上在住し、その間に金融機関時代の知識と経験を活かすべくファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年にCFP®取得後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行っています。幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な対応を心掛けています。
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この記事の目次

人生は山あり谷ありですが、一番不安なのは、高齢になって働けなくなった時に生活費が足りなくて困窮することではないでしょうか。そのためには、リタイアする前に金銭的な準備をしていく必要があります。2019年6月に金融庁が発表した「老後2000万円問題」は、平均モデル世帯のケースです。

生き方が多様化した現代では、金額は人それぞれ異なるでしょう。誰もが2千万円を目指すのではなく、自分の場合は本当にいくら必要なのかを知り、それに向かって準備をすることが大切です。その方法を3つのステップを追って解説します。

老後費用って何?

老後とは、リタイアして勤労収入がなく、主に年金で暮らしている時期のことです。老後に生活していくために必要なお金は老後支出です。リタイアして勤労所得がなくなると、収入のほとんどは公的年金になることが多いでしょう。

ここでは、老後の支出が収入を上回る(老後の収支が赤字になる)際に、補てんしなければならない金額を「老後費用」とします。公的年金以外に不動産を持っている、或いは親から不動産を譲り受けた人は、家賃などの不動産収入があるかもしれません。リタイア後も現役時代と同じくらいの収入があれば、自分で用意する「老後費用」は基本的に必要ないといえます。

しかし、ほとんどの人は老後の収入が現役時代の収入より少なくなり、支出が収入を上回るため、家計は赤字になりがちです。その赤字分を補てんする金額が、準備しなければならない「老後費用」なのです。

ステップ1:まずは老後の収入を確認(収入編)

リタイア後の家計の収支を確認するために、まず収入からみていきましょう。以下のような収入の可能性があります。

A. 公的年金

  • 国民年金…20歳から60歳までの日本に在住する人(加入は義務)
  • 厚生年金(共済年金)…会社員や公務員の人

B. その他の年金

  • 企業年金(企業型確定拠出年金など)
  • 個人年金保険(民間の生命保険会社等へ任意で保険料を払い、積み立てたもの)
  • 企業年金(企業型確定拠出年金など)

C. 退職金

D. それ以外の収入

不動産(親から相続或いは贈与を受けた不動産を含む)からの収入、事業や副業からの収入、など。

A:公的年金

一般に65歳から受給します。日本年金機構のホームページに登録をすると、「ねんきんネット」を通じて65歳からもらえる年金額をシミュレーションすることができます。50歳以上の人は、これまでのペースで保険料を支払い続けた場合に65歳からもらえる年金額を「ねんきん定期便」でも確認することができます。

公的年金の1年あたりの金額は、少ないと感じられるかもしれませんが、終身払い(亡くなるまでもらい続けることができる)のため、長生きリスクに備えられる保険でもあります。

B:その他の年金

1.企業年金は企業の人事部や総務部へ、
2.iDeCoは自分の口座を管理している金融機関へ、
3.個人年金保険は保険会社へ、詳しい情報を問い合わせましょう。

C:退職金

使い道が既に決まっている(住宅ローンなどの繰り上げ返済など)場合を除き、老後費用に充当できる可能性があります。年金のように定額を定期的に取り崩して利用することができます。

D:それ以外の収入

不動産、副業、事業などがあれば、加算します。

ステップ2:老後にかかる費用はいくらなのか?(支出編)

住んでいる地域や生活の仕方により、金額は人それぞれです。重要なのは、自分の場合はいくらなのかを見積もることです。そのためには、現在の生活費を参考に試算してみることが有効と考えられます。

まずは、現在の生活費を概算してみましょう。

生活費には、

  • <生活に必要な費用(日常生活費)> 食費、光熱費、交通・通信費、住宅費、日用品費、衣料品費など
  • <任意または不定期でかかる費用(任意費用)> 保険関連費、車両費、子どもなどの教育費、趣味・娯楽・旅行などの費用、交際費、など

がありますので、上記に加えます。

こうして、まずは現状の支出を把握します。月単位または年単位で、把握しやすい方で計算します。

その後、リタイア後の支出をイメージして、それぞれのパターンに合わせて加算減算をします。現在子どもがいる家庭で、リタイア後には夫婦二人の生活になるイメージであれば、日常生活費を9割程度にして計算してみてもよいでしょう。一人暮らしのかたは、日常生活費はあまり変動がないかもしれません。

任意費用に関しては、まさにリタイア後に必要なものはプラスし、必要なくなるもの(子供の教育費、払済みになる保険関係費など)をマイナスします。例えば、リタイアして自由に使える時間を趣味や旅行に費やしたいなら、その分を上乗せして考えます。

逆に子供が独立して教育費がかからなくなる、リタイアしたら会社関係の付き合いがなくなるから交際費が減少するなどであれば、各々マイナスします。リタイア後の行動パターンを想像しながら、実際に起こり得る金額をあてはめて可視化してみましょう。

こうしてプラスマイナスした結果の金額を把握します。一月あたりで試算した場合は12月分を掛けて、年額を計算します。

ステップ3:収支から老後費用を計算

では、いよいよ一般論ではなく、自分にとっての「老後費用」を計算してみましょう。

何年生きるかは予測不可能ですので、ここでは平均寿命を参考にします。厚生労働省「令和元年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.41歳、女性は87.45歳です。
【参照】厚生労働省「令和元年簡易生命表」

今後もこの数字は伸びてくることが予想されますので、男女差はありますが、90歳まで計算するものとします。65歳にリタイアをする場合、65歳から90歳までの25年間が目安となります。

夫婦二人の場合は合算して考えます。夫婦の年齢差にもよりますが、男性が90歳になるまで夫婦二人で暮らすことを想定してみてはいかがでしょうか。

ステップ1

収入編

A.公的年金の1年間にもらう金額×25年分
B.65歳~90歳までもらうその他の年金の合計額
C.退職金(老後資金に使える金額)
D.65歳~90歳まで得られる収入の合計額

上記A~Dの合計額をすべて足し上げます。

ステップ2

支出編

リタイア後に見込まれる一月の生活費×12月×25年

ステップ3(65歳から90歳までの収支を計算)

ステップ1の結果 - ステップ2の結果 = ステップ3の結果

ステップ3の結果がプラスになる人は、収入の方が支出を上回るので、老後費用の準備は基本的には必要ありません。逆にマイナスになる人は、そのマイナスの金額が老後に取り崩すために貯めておかなければいけない金額、いわゆる「老後費用」となります。

ここで事例をみてみましょう。

<会社員のSさん夫婦 ともに現在30歳の場合>

ステップ1

A.公的年金:夫180万円、妻120万円、計300万円 × 25年 = 7500万円
B.確定拠出年金:夫 拠出金合計額 700万円
C.退職金:なし
D.その他の収入: なし

A~Dの25年間総計=8200万円

ステップ2

リタイア後に見込まれる一月の生活費30万円×12月×25年=9000万円

ステップ1総計8200万円 - ステップ2合計9000万円 = ステップ3 マイナス800万円

従って、Sさん夫婦に必要な「老後費用」は800万円となります。

マイナスになった金額をどう準備するのか?

方法は主に3つです。

  • 支出を減らす(固定費の見直しなど)
  • 収入を増やす
  • 資産運用をしてお金にも働いてもらう

1.支出の見直しは、まず保険料、住宅ローン、通信費など、定額で払っているものを削減できないかを見直します。一度見直しをすれば、削減効果はずっと続くので効率的だからです。

2.収入を増やすためには、副業をする、キャリアアップを図るなどが考えられます。1と2は現役時代とリタイア後時代のどちらか一方でも両方でも実行できる方法です。

3.の資産運用は、リタイア後は損が出た場合に取り戻す時間が少なくなってきますので、できれば主に現役時代に行っておきたい方法です。

まとめ

今回は、「老後費用」に焦点をあてましたが、人生の3大支出には、「老後費用」のほかに、「教育費」「住宅費」があります。多くの人は、現役時代に教育費や住宅費を捻出しつつ、「老後費用」を準備することになりますので、これらのバランスも重要になります。

また、リタイア後は医療や介護の不安も大きくなるでしょう。現役時代は働き盛りではあるものの、健康に留意して、将来の医療や介護の期間や費用を少なくする努力も大切でしょう。充実したリタイアライフを送るためにも、準備は念入りにしておけたらよいですね。

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