手形貸付とは?メリット・デメリットや申し込み方法
∨【コンテンツの広告表記に関して】
>提携企業一覧
元 銀行員
銀行の支店勤務にて、カードローン(個人向け融資)の申込み受付・審査・管理などを含むあらゆる業務を経験。10年以上の勤続期間中に、延べ10,000名を超える利用者に適切な提案を行った。
- ✓手形貸付で資金調達したい
-
✓どうやって申し込むの?
- ✓手形貸付のリスクは?
手形貸付とは、お金を借りる方法の一つです。
事業者が資金を調達する際に、"手形"を差し出してお金を借ります。
現在でも使われている資金調達の方法ですが、もし利用するなら仕組みを把握することが大切です。
手形貸付とは?仕組みや特徴は?
手形貸付とは、約束手形(略称:手形)を差し出して、お金を借りる方法を指します。
約束手形とは、ザックリ言うと、支払人・受取人・金額などが記載された書類であり、小切手・債権・株式と同様に有価証券の一種です。
この約束手形に「支払う金額・支払い期日」を記載して、支払い人は約束を守らなくてはなりません。
当座預金の口座開設が必要
当座預金とは、主に法人や個人事業主が小切手の支払いに使う口座です。普通預金のように利息は付きません。
現金化は小切手や手形、振替で随時行えます。
手形貸付を行う際は、この当座預金を開設しなくてはなりません。口座開設後、支払い日までに手形で契約した金額を入金しておく必要があります。
手形貸付のメリット&デメリットについて
手形取引は中小企業を中心に多く行われています。
全国銀行協会によると、平成28年の全国の手形交換枚数は約3万7000枚、交換高は総額約435兆円に上ります。
手形貸付もその一つなのです。
手形貸付の最大のメリットは審査の早さ
手形貸付の主なメリットは次のような点です。
|
やはり審査が早く、即日融資が可能であるという点です。
また、審査が早い上に1ケタの低金利で借り入れできます。
もちろん、手形が担保に入っているというのが理由ですが。
そして、返済方法も1年を期限に自分で決められます。1年後に一括返済すれば資金効率は最高です。
手形貸付の最大のデメリットは信用がないと無理
手形貸付のデメリットは主に次の通りです。
|
銀行と手形貸付をする場合は、高い信用力が必要で、取引暦、業暦、業績は必須です。
個人事業主は断られることもあり、利用のハードルは高いのです。
さらに、1度不渡りを出してから半年以内に再度不渡りを出すと、銀行取引停止。実質的に倒産と見なされます。
手形貸付の手続きや審査のポイント
手形貸付を行うためには、必要な手続き、さらには審査があります。
手形取引は全体的に利用しやすいシステムなので、ただ手形を振り出せばいいと考えがちですが、そうではありません。
手続き方法は簡単
金融機関との融資取引では、一般的に借用証書、金銭消費貸借契約証書などを作成します。
ただ、手形貸付は証書を作らず、手形が証書の役割の代わりを果たします。
※手形貸付の手形は銀行を受取人とする約束手形
また、取引をスタートする際に、「銀行取引約定書」を銀行に入れている場合も多いので、手形にサインと捺印をするだけです。
だから審査が早いのです。
審査は早いがかなり厳しい
手形を振り出せばいいというものではなく、銀行が応じるかどうかの審査があります。
取引実績、業績はもう筒抜けであるため、すぐに結果は出ます。
基本はこの2点の要素が重要です。
また、資金使途は必ず聞かれます。
Q.手形貸付の審査で重要視されるポイントは何か
元 銀行員|武藤英次
資金使途の妥当性と業績などが厳しくチェックされます
法人であれば決算書(直近2~3期分)、個人事業主であれば確定申告書(直近2~3年分)の提出が求められ、内容を詳細にチェックされることになります。
業歴の長さや事業内容はもちろんのこと、事業主個人の人柄や資産まで調べ上げられますので、気楽に申込めるようなものではないのも、また事実と言えるでしょう。
基本的に運転資金として融資を受けることになりますが、事業内容と照らし合わせて融資の妥当性なども詳細にチェックされますから、なぜその資金が必要であるのかを理路整然と説明できる必要があります。
手形貸付の仕訳と利息について
手形貸付金とは、借用証書の代わりに手形を受け取って貸し付けたお金を管理するための勘定科目です。
仕訳では、借用証書で借り入れたお金と明確に区別するようにしましょう。
100万円を手形貸付で借り入れた場合
手形取引は、約束手形を受け取ってお金を貸すケースです。
普通の証書貸付金を、手形貸付金に入れ替えます。
例を見てみましょう。
◆借り方
・現金100万円
◆貸し方
・手形貸付金100万円
手形を切って100万円を借りたので、借り方(資産)に現金100万円を入れます。
一方、貸し方(負債)の方に手形貸付金100万円が入ります。
利息は前取りが一般的な慣習
手形貸付は、金融機関が利息を前取りすることが慣行です。
・貸付金から天引き
・現金か振込みで後に入金する
前もって天引きされるのが一般的です。
また、円未満の額は切り捨てされます。
手形ジャンプと手形不渡りについて
手形決済期日をリスケすると、手形ジャンプと呼ばれます。
手形が落ちないと手形不渡りと呼ばれ、銀行取引停止となります。
短期の借り入れである以上、その意味ではリスクが高いとも言えます。
銀行次第では一括回収ではなう事業継続もありえる
通常の手形取引は2回不渡りを出すと、銀行取引停止になります。
不渡り、リスケにできることもあるかもしれません。
いずれにせよ、銀行はケースによって債権回収の可能性が最も高い方法を取るはずです。
だから、事業継続の可能性もないわけではありません。
Q.2度の不渡り後でも事業継続葉可能なのか
元 銀行員|武藤英次
2度目の不渡りは実質的な倒産と言われています
半年間に2回の不渡りを出してしまいますと銀行取引停止処分を受けることになります。この不渡り情報は、信用金庫などを含むすべての銀行に通知されます。
そのため手形や小切手による取引はもちろん、融資を受けることもできなくなり、普通預金なども差し押さえられてしまいますので実質的な事業継続は極めて困難な状況となるわけです。
ただ、不渡り手形を出してしまった取引銀行で融資取引が無かったような場合、普通預金はそのまま利用可能ですので、そのような場合事業継続が全く不可能というわけではありません。
しかしながら信用を大きく失う状況に変わりはありませんので、実質的な倒産と同義に捉えられるのは無理もないところでしょう。
Q.個人事業主や取引歴がない事業者は手形貸付を利用できないのか
元 銀行員|武藤英次
全く利用できないということではありません
個人事業主であるから、もしくは取引歴がないからと言って銀行に必ずしも門前払いされるというわけでもありません。
一定の業績があり、かつ資金使途が明確なのであれば審査を受けられることが多いでしょう。
ただし銀行のプロパー融資を受けるには、やはりある程度の取引歴があったほうが好ましいのは確かです。
取引歴がない場合は創業支援融資などの公的制度融資利用を勧められることが多くなるでしょう。
公的制度融資では揃えるべき書類の多さや、申込みから融資実行までの時間の長さが珠にキズといったところですが、審査に通れば金利の安さは大きな魅力と言えるでしょう。